すべての人は、安全で強力、そして高速なオープンウェブの恩恵を受けています。私たちはここ 1 年で、次にあげる 3 つの領域について、集中的にウェブの強化を行ってきました。
この投稿では、本日(元記事公開当時)の Chrome Dev Summit の基調講演で共有したアップデートの概要をまとめます。
私たちはプライバシー サンドボックスの作業を継続し、ウェブのプライバシーを抜本的に強化するオープンな基準を作ろうとしています。そして、ウェブ コミュニティと協力しつつ、サードパーティ Cookie やクロスサイト トラッキング メカニズムに代わり、プライバシーを守ることができる新たな仕組みを構築しようとしています。Client Hints API では Chrome でフィンガープリンティングに使える領域を減らし、Chrome オリジン トライアルを通して実験できる 2 つのソリューションも提供しています。Click Conversion Measurement API は、クロスサイト識別子を使わずに広告コンバージョンを測定します。Trust Token API は、パッシブなトラッキングを行うことなく、あるコンテキストから別のコンテキストに信頼を伝える際に役立ちます。
同様に、数億人のユーザーが利用する Chrome ウェブストアの 250,000 件以上の拡張機能でも、セキュリティとプライバシーが最重要になっています。私たちは、拡張機能はデフォルトで信頼できるものでなければならないと考えています。そのため、拡張機能プラットフォームにたくさんの変更を行うドラフト提案についてお知らせしました。拡張機能デベロッパーからのさまざまな提案を反映すれば、Manifest V3 の安定版リリースに向けた準備が整います。その目的は、セキュリティの強化、ユーザーの制御とプライバシーの向上、パフォーマンスの改善です。
Manifest V3 と合わせて、リモートでホストされたコードは許可されなくなります。これは、ユーザーのプライバシーやセキュリティを侵害する悪意のある拡張機能を防ぐためです。また、新しい拡張機能モデルでは、ユーザーがインストール時にセンシティブな情報へのアクセスを許可しないことを選択できるようになります。さらに、バックグラウンド ロジックに新たなアプローチを導入します。バックグラウンド ページに Service Worker を導入し、拡張機能 API に新たな宣言的モデルを適用することで、ユーザーに一貫したパフォーマンス保証を提供します。現在、Manifest V3 は Chrome 88 ベータ版で試験運用版として利用できます。Chrome ウェブストアは、Chrome 88 が安定版になる 1 月中旬から、Manifest V3 拡張機能を受け付ける予定です。
ウェブで新しい体験を構築しているデベロッパーから、すばらしい活用例が登場しています。Gravit Designer は、File System Access API を使ってユーザーが簡単にファイルの読み書きを行えるようにし、さらに新しい Local Font Access API でローカルにインストールした特別なフォントを利用できるようにしています。Adobe は、Spark ウェブアプリでユーザーがすばらしいビジュアル ストーリーや美しいデザインのコンテンツを簡単に作れるようにしています。
本日(元記事公開当時)、Progress Web App(PWA)に新機能を追加します。これによって、PWA を Google Play ストアに掲載して見つけてもらいやすくすることができます。Chrome 86 では、Trusted Web Activity を使っている PWA を Play ストアで一覧表示できるようになります。また、Chrome 88 では、新しい Digital Goods API を使って支払いを受け取れるようにしています。
デベロッパーの皆さんがすべてのユーザーに最適な体験を提供できるようにするため、Chrome のパフォーマンス(スピードのほか、電力、メモリ、CPU などのリソースの使用量)は常に私たちの最優先事項になっています。
今年は、プロファイルによる最適化とタブ スロットリングによって、スピードに関するいくつかの重要な改善を行いました。そして本日は、V8 のメモリ フットプリントを大幅に削減したことをお知らせします。V8 ポインタ圧縮でメモリの節約に向けた大きな一歩を踏み出したことに加え、ウェブページの JavaScript ファイルを並列に読み込むことで解析による中断を完全に無くしました。これによって、ページで必要になるときには既にスクリプトの実行準備が整っているように、スクリプトの解析とコンパイルを実行できます。
Web Vitals の取り組みについて発表して以来、ウェブページのパフォーマンスを測定する際にこの基準が使われることが多くなっています。Google 検索は、2021 年 5 月より、検索ランキングの新たなシグナルに Core Web Vitals を含めることを発表しました。Chrome ユーザー エクスペリエンス レポートに加え、Search Console の Core Web Vitals レポートやその他多くの Google 製ツール、Cloudflare などの他のプロバイダで、Core Web Vitals がウェブページのパフォーマンス指標として表示されています。
この夏、Google アナリティクスを使っているサイト向けに、web-vitals Javascript ライブラリをリリースしました。本日、オープンソースのウェブサイトおよびツールである Web Vitals Report についてお知らせしました。これを使うと、Google アナリティクスで Web Vitals 指標データのクエリや視覚化ができるので、セグメント間で簡単にパフォーマンス データを比較することもできます。
最後になりますが、皆さんのフィードバックや、ウェブ インターフェースの構築が難しい点についてのご意見をお待ちしています。私たちは、ウェブのスタイリング機能の改善を進めており、レンダリング パフォーマンスを大幅に向上させる content-visibility CSS 機能を公開しました。簡単に CSS を拡張できる API セットである Houdini.how のお知らせなど、UI スタイリングを改善するアップデートやツールにご期待ください。
Chrome Dev Summit は、常にコミュニティとのつながりを大切にしています。今回は直接顔を合わせることはできませんでしたが、Chrome チームは、偶然の会話や新しい発見、記念品の収集など、実際のカンファレンスのいい所を集めた PWA、Chrome Dev Summit Adventure をリリースしました。この実験について皆さんからの感想を聞いたり、リアルタイムでチャットしたりするのが楽しみです。
コミュニティの一員になり、世界中の Google Developer Group に参加しましょう。CDS Extended イベントでは、地域のデベロッパー コミュニティを集めて、Chrome Dev Summit 2020 のハイライトを確認したり、インタラクティブなセッションがライブで行われたりします。このイベントのすべてのリストをチェックしてください。
YouTube チャンネルでは、いつでもセッションを視聴できます。また、web.dev ニュースレターにサインアップしてウェブの最新アップデートを受け取ってください。
また来年にお会いしましょう!
※ 日本では Chrome Dev Summit の日本版となる Chrome Dev Summit Recap 2020 を開催しました。アーカイブは 2021 年 1 月中旬まで閲覧可能ですので、ぜひ今からでも登録・ご視聴下さい。