編集者のメモ: 業界の調査(Chrome などの)と HTTPS の普及を鑑み、Chrome のアドレスバーの鍵アイコンを新しい「調整」アイコンに置き換える予定です。これには、デフォルトで安全な状態であるべきという点を強調する、そしてサイトの設定にアクセスしやすくするという 2 つの狙いがあります。長年にわたるこの取り組みについて、以下をお読みください。
HTTPS でサイトが読み込まれるとブラウザに鍵アイコンが表示されるのは、1990 年代の Netscape の初期バージョンから続いている伝統です。Chrome はこの 10 年間にわたって、
HTTPS の採用を増やし、ウェブをデフォルトで安全な場所にするための大規模な取り組みに参加してきました。2013 年時点では、Alexa のトップ 100 万サイトのうち、HTTPS をサポートしていたのはわずか
14% でした。しかし、現在は HTTPS が標準となっており、
Windows 版 Chrome で読み込まれているページの 95% 以上が HTTPS を使った安全なチャネルを経由しています。これはエコシステムにとってうれしいニュースであるとともに、ブラウザでセキュリティ保護を知らせる方法を再評価する機会でもあります。中でも特に重要なのが、鍵アイコンです。
鍵アイコンは、ネットワーク接続がブラウザとサイトの間の安全なチャネルであり、サードパーティがネットワーク接続を改ざんしたり盗聴したりできないことを示すためのものです。しかしこれは、HTTPS が一般的ではなかった時代の名残でもあります。もともと HTTPS はかなり珍しいものだったことから、ある時点で Internet Explorer は、接続が HTTPS によって保護されていることを通知するアラートをポップアップ表示するようになりました。これは、ザ・シンプソンズの
「万事問題なし」アラームを連想させます。HTTPS が珍しかった時代、鍵アイコンには HTTPS によって追加の保護が提供されていることをアピールするという役割がありました。しかし今は、すでに状況が変わっています。HTTPS は例外ではなく標準となり、Chrome もしかるべく進化してきました。
たとえば、鍵アイコンはウェブサイトの信頼性を表すものではありません。調査の結果、多くのユーザーが鍵アイコンを誤解していることがわかったため、2016 年にこのアイコンのデザインを変更しました。しかし、努力を尽くしたにもかかわらず、
2021年の調査では、
鍵アイコンの意味を正確に理解していたのは調査対象者の 11% だけでした。この誤解は無害なものではありません。ほぼすべてのフィッシングサイトでは HTTPS を使用しているため、鍵アイコンも表示されています。この誤解は広く浸透しているため、
FBI を含む多くの組織が、鍵アイコンはウェブサイトの安全性を示すものではないというガイドを明確に打ち出しています。
|
調査で Chrome の UI を表示すると、ユーザーは南京錠を見て架空の e コマースサイトの信頼性を評価していました。実験の参加者にサイト コントロールを表示し、この状況で役立つと思われる情報を示すように求めました。これは、そのときのクリック パターンをヒートマップにしてオーバーレイ表示したものです。 |
現在の鍵アイコンは、Chrome のサイト コントロールの便利な入口になっています。2021 年には、Chrome の
鍵アイコンの代わりに、セキュリティを連想させないサイト コントロールの入口を表示する実験についてお知らせしました。
HTTP が安全でないことを示す表示は、URL バーに残しました。すると、ユーザーがサイト コントロールを開く回数が増え、大幅に UI を変更したときに起こりがちな戸惑いも見られませんでした。
現在の鍵アイコンからアクセスできるサイト コントロール。
他の団体も含めた調査結果と、HTTPS への移行が普及していることを踏まえて、Chrome の鍵アイコンを調整アイコンのようなものに置き換える予定です。次のような調整アイコンを考えています。
- 「信頼できる」ことを連想させない
- クリックできることが明らかである
- 一般的な設定などのコントロールを連想させる
|
鍵アイコンを、コントロールや設定を示すときに一般的に使われる調整アイコンのようなものに置き換える予定です。 |
鍵アイコンをニュートラルなインジケーターに置き換えることで、鍵アイコンがページの信頼性を表す
という誤解を防ぐとともに、Chrome がデフォルトで安全な状態であることをアピールします。また、鍵アイコンをクリックすると重要な情報やコントロールが表示されることを理解していなかったユーザーが多いことも、調査で明らかになりました。この新しいアイコンは、鍵アイコンにつきまとう誤解を防ぎつつ、権限管理やセキュリティの詳細情報に簡単にアクセスできる場所となるはずです。
新しいアイコンは、PC プラットフォーム向けの一般的なデザイン更新の一環として、2023 年 9 月上旬に公開される Chrome 117 でリリースされる予定です。接続が安全でないことを示す警告は、今後も表示されます。Chrome Canary の chrome://flags#chrome-refresh-2023
で [Chrome Refresh 2023] を有効にすると、新しい調整アイコンが表示されるようになります。ただし、これはまだ進行中や開発中の状態であり、最終版ではないことに注意してください。
|
|
| 同じページ コントロール、新しいアイコン。鍵アイコンは詳細な接続セキュリティ情報の入口として残りますが、トップレベルのアクセス ポイントは新しくなります。 |
Android の鍵アイコンも、PC 版のさまざまな変更のタイミングに合わせて変更します。iOS の鍵アイコンはタップできないため、完全に削除します。平文 HTTP が安全でないことを示す表示は、すべてのプラットフォームで今後も残ります。
HTTPS が標準になるに伴い、Chrome と幅広いセキュリティ コミュニティの両方では、鍵アイコンを置き換えることが長年の目標でした。年を追って HTTPS の採用が大きく拡大したことで、ようやくこの手順を安全に実施できるようになったことをうれしく思っています。私たちはこれからも、デフォルトで安全なウェブの実現に向けて進んでいきます。
Posted by
Eiji Kitamura - Developer Relations Team