Google と米国国立標準技術研究所(NIST)が、米国の大学向けのナノテクノロジー研究開発用オープンソース テスト基盤の共同研究開発について合意したことをお知らせします。米国商務省の機関である NIST は、既存の平坦化ウェハーの設計を、SkyWater Technologies のオープンソース 130nm プロセス(SKY130)によって米国内で製造できるオープンソース フレームワークに移行することから始める予定です。物理ウエハーとソースコードは、今後数か月のうちに入手できるようになります。NIST と Google、そしてオープンソース コミュニティは力を合わせて設計を進め、米国のメーカーによる生産に向けた技術移管を含め、基礎科学と応用科学の両面で研究を促進する予定です。
この合意は、半導体テクノロジーを身近なものにするという Google の目標を推し進め、半導体メーカーから学術研究者に前例のないリソースが提供されるようになるため、半導体やナノデバイスの物理特性についての研究が強化されます。研究には、化学的性質、欠点、電気特性、高周波操作、スイッチング動作などが含まれ、規模の経済によって総コストを減らすことができます。最も重要なのは、アクセスの拡大によって研究者がメーカーのリソースを活用して新しいテクノロジーを開発できるようになり、技術移管プロセスが進むことです。大学はすでに業界と密接に関連するプラットフォームを使っているので、そこから大量生産にシームレスに移行できます。これにより、技術移管の「死の谷」を超えて技術を実用化する科学者の能力が増大します。
ナノテクノロジー研究では、通常はチップの製造に使われるシリコン ウエハーを独自の方法で活用しています。ウエハーをマイクロチップのパッケージにするのではなく、平坦化されたスムーズな表面を、ナノスケール構造の構築やテストを行うための優れた基板として使います。これは、大量生産への移行をテストする際にも、同じように役立ちます。
このプラットフォームのウエハーには、単純なトランジスタ配列に基づいたパラメトリック検定構造(プローブ ステーションでプローブ可能なもの)から、ユーザーが合成デジタル回路を使って操作できる数千の複雑な測定に至るまで、たくさんの種類の測定構造が含まれています。重要なのは、大学がこのウエハーを 200 mm フォーム ファクタで利用できるようになることです。また、表面の粗さが 1 ナノメートル未満の中規模生産平坦化ウエハーも利用できます。精密な製造を行うためには、滑らかで平らな表面が極めて重要です。
このウエハーには大学のナノ加工設備でよく使われているフォトリソグラフィと電子ビームの位置合わせマークがあるため、NIST の研究者たちも、大学の研究者がメーカーのチップを直接簡単に使えることを保証しています。また、表面に金属パッドがついているため、表面から半導体トランジスタにアクセスできます。
NIST の科学者たちは、このナノテクノロジー アクセラレータ プラットフォームによって、さまざまなテクノロジーに科学的調査が広がることを期待しています。たとえば、メモリデバイス(抵抗スイッチ、磁気トンネル接合、フラッシュ メモリ)、人工知能、プラズモニクス、半導体バイオエレクトロニクス、薄膜トランジスタ、さらに量子情報科学といったテクノロジーが挙げられます。
このプログラムでは、Google のこれまでの貢献や、GDSFactory や OpenFASOC オープンソース プロジェクトのサポートによる成果も活用しています。これらのプロジェクトは、重要な測定デバイスの作成を自動化し、その作成時間を月単位から日単位に短縮するものです。2023 年に予定されているフルウエハーのテープアウトに先がけて、ミシガン大学、カーネギー メロン大学、メリーランド大学、ジョージ・ワシントン大学、ブラウン大学のパートナーと共同作業を行っている NIST の科学者たちは、Google の OpenMPW プログラムを活用して、ナノテクノロジー アクセラレータに搭載予定の予備回路の開発とテストを進めています。予備テストによって、プログラムの目的を達成しつつ、開発中の回路が科学コミュニティに最も役立つようになります。
最新の研究の鍵となる要素は、再現性です。これは、別の機関の研究者がお互いの実験を繰り返し、それを改善できることを指します。オープンソース フレームワークに移行することで、研究者が再現可能な結果を共有しやすくなり、今後のシミュレーションに役立つオープンソース データセットが生まれ、科学コミュニティで最先端のナノテクノロジーや半導体の製造法が進化します。
NIST と Google は、最初のウエハーの生産と提供を米国の一流大学に向けて行う予定です。プログラム後には、米国の科学者はこのウエハーを Skywater から直接購入できるようになります。使用許諾要件はないので、何の制約もなく自由に研究を行えます。ウエハーは、完全なマスクセットの費用やゼロから集積回路を設計する費用の数百分の 1 の価格なので、科学者はこの産業技術をはるかに簡単に入手して使用できるようになります。長期的に見れば、最近発表した SKY90FD オープンソース PDK で将来のプラットフォームを NIST と共同開発することで、この R&D エコシステムはさらに拡大します。
この研究の取り組みを始めるため、NIST は 2022 年 9 月 20~21 日より、集積回路の測定についてのワークショップである "NIST Integrated Circuits for Metrology Workshop" を開催しました。これはオンラインで開催され、初日にはいくつかのプレゼンテーションとパネル ディスカッションが行われました。2 日目には、研究者、科学者、エンジニアによるワーキング グループが、オープンソース チップ テクノロジーを使い、モノリシック集積化のパラメトリック検定構造の作成に焦点を当てた作業をしました。イベントのウェブサイトにアクセスすると、このプログラムの詳細を確認できます。