特に記載のない限り、下記の変更は Android、Chrome OS、Linux、macOS、Windows 向けの最新の Chrome ベータ版チャンネル リリースに適用されます。ここに記載されている機能の詳細については、リンクまたは ChromeStatus.com の一覧でご確認ください。2021 年 8 月 26 日の時点で Chrome 94 はベータ版です。
既存のメディア API(HTMLMediaElement、Media Source Extensions、WebAudio、MediaRecorder、WebRTC)は高レベルで、特定の用途に特化しています。低レベルのコーデック API は、遅延の影響を受けやすいゲームのストリーミング、クライアント側のエフェクトやコード変換、ポリフィル対応のメディア コンテナのサポートなど、新たな用途に適しています。JavaScript や WebAssembly によるコーデック実装のように、ネットワークや CPU のコストが増加することはありません。
HTMLMediaElement
WebAudio
MediaRecorder
WebCodecs API は、すでにブラウザに組み込まれているメディア コンポーネントをプログラマーが利用できるようにすることで、このような不足を解消します。具体的には、次のような内容です。
この機能は Chrome 93 でオリジン トライアルを終えており、現在はデフォルトで有効です。詳しくは、WebCodecs による動画処理をご覧ください。
WebGPU API は、ウェブ用の WebGL と WebGL2 グラフィックス API の後継です。「GPU コンピュート」などの最新機能や、GPU ハードウェアへの低オーバヘッド アクセス、パフォーマンスや予測可能性の向上などが導入されています。既存の WebGL インターフェースはイメージの描画用に設計されたもので、かなりの労力をかけなければ他の用途の計算は行えませんでしたが、その点が改善されています。
WebGPU は、Direct3D 12、Metal、Vulkan といった最新のコンピュータ グラフィックス機能を公開し、グラフィックス プロセッシング ユニット(GPU)で行われるレンダリングや計算の操作をします。以前のテクノロジーと比べた場合の WebGPU の利点は以下のとおりです。
この機能は、Chrome 99 での導入を目指して、Chrome 94 からオリジン トライアルが始まります。詳しくは、WebGPU で最新の GPU 機能にアクセスするをご覧ください。
ユーザーの操作に的確に応答し、時間が経っても応答性が低下しないウェブアプリを構築するのは困難です。応答性を阻害する主な原因の 1 つがスクリプトです。インクリメンタル サーチ機能について考えてみてください。この機能を搭載したアプリは、ユーザーの入力に追いつきつつ、結果をフェッチして表示する必要があります。その際、アニメーションなど、ページで起きていることは考慮されませんが、アニメーションはスムーズにレンダリングする必要があります。
通常この問題には、メインスレッドの作業を分割してスケジュールすることで対処できます。具体的には、適切なタイミングで作業を非同期的に実行します。しかし、このアプローチ自体にも問題があります。たとえば、デベロッパーがどのように優先度を設定しようと、メインスレッドでは時間の奪い合いが生じています。メインスレッドはデベロッパーが設定した優先度を認識しないだけでなく、fetch() 操作やガベージ コレクションといったブラウザのタスクも行っているからです。
fetch()
scheduler.postTask() メソッドを使うと、デベロッパーが OS のブラウザのスケジューラで 3 段階の優先度(user-blocking、user-visible、background)を指定してタスク(JavaScript のコールバック)をスケジュールできるようになるので、このスケジュールのジレンマを解消できます。また、動的にタスクをキャンセルしたり、優先度を変更したりできる TaskController インターフェースも公開されます。
scheduler.postTask()
TaskController
この機能は Chrome 93 でオリジン トライアルを終えており、現在の Chrome ではデフォルトで有効です。その他の新しいオリジン トライアルや完了したオリジン トライアルの一覧については、以下のオリジン トライアルのセクションをご覧ください。
このバージョンの Chrome には、以上の項目の他に、以下のオリジン トライアルが導入されています。オリジン トライアルとして新機能を試せるようにすることで、ウェブ標準コミュニティにユーザビリティ、実用性、有効性についてのフィードバックを提供することができます。以下の項目を含め、現在 Chrome でサポートされているオリジン トライアルに登録するには、Chrome オリジン トライアル ダッシュボードをご覧ください。Chrome のオリジン トライアルの詳細については、ウェブ デベロッパーのためのオリジン トライアル ガイドをご覧ください。Microsoft Edge は、Chrome とは別に独自のオリジン トライアルを行っています。詳細については、Microsoft Edge オリジン トライアル デベロッパー コンソールをご覧ください。
Chrome では、新しい HTTP ステータス コードである 103 Early Hints のテストが行われています。これは、早い段階でサブリソースをプリロードするためのものです。 <link rel=preload> などの link ヘッダーを含む 103 レスポンスを受け取ると、Chromium は最終的なレスポンスを受け取る前に、指定されたリソースのプリロード(またはプリコネクトやプリフェッチ、あるいはそのすべて)を試みます。ウェブ デベロッパーはこの方法を使って、アプリやサイト、ページを最適化できます。
<link rel=preload>
Chrome で以前にオリジン トライアルが行われていた以下の機能は、現在デフォルトで有効化されています。
このアップデートにより、CanvasRenderingContext2D オブジェクトと ImageData オブジェクトのデフォルトのカラースペースが sRGB であることが正式に明文化されます。そのため、CanvasRenderingContext2D インターフェースが完全にカラー マネジメントされる(すべての入力が描画キャンバスのカラースペースに変換される)ことが明確になります。これまでは、上記の動作は慣習上のものであり、明文化はされていませんでした。今回のアップデートで、以下の点が変更されます。
CanvasRenderingContext2D
ImageData
現在、CanvasRenderingContext2D で表示されるコンテンツは、sRGB カラースペースに限定されていますが、このカラースペースには最新のディスプレイやカメラほどの機能はありません。今回の機能で、Display P3 カラースペースを使用する CanvasRenderingContext2D オブジェクトを作成できるようになります。さらに、CanvasRenderingContext2D の色の動作に関して、いくつかの曖昧だった点が明確になります。
VirtualKeyboard インターフェースには、仮想キーボードの表示や非表示のタイミングをコントロールするメソッドやプロパティが含まれています。また、仮想キーボードがページのコンテンツを遮ると、仮想キーボードのサイズを含むイベントが発行されます。仮想キーボードは画面に表示されるキーボードで、ハードウェア キーボードが利用できない場合の入力に使います。
VirtualKeyboard
ハードウェア キーボードとは異なり、仮想キーボードは想定される入力に合わせて形状を変えることができます。デベロッパーは、inputmode 属性によって仮想キーボードの表示形状をコントロールできますが、仮想キーボードの表示や非表示のタイミングのコントロールには制限がありました。
inputmode
transform-style: preserve-3d と perspective プロパティが仕様に準拠します。preserve-3d プロパティを使うと、子要素を親の 3D シーンに追加できます。また、perspective プロパティは子要素に透視変換を適用します。この変更が行われる前の Chromium は、両方の効果を DOM ツリーではなく内包するブロック階層に基づいて適用し、変換関連のプロパティがない要素にも効果を拡張できるようになっていました。
Chrome は、flex-basis プロパティと flex 省略記法の値として、キーワード content、min-content、max-content、fit-content をサポートします。content キーワードを使うと、flex-basis と優先されるサイズ プロパティ(width または height)の両方が auto である場合のように、flex のベースサイズがデフォルトのサイズ計算ルールを使用します。flex-basis が auto の場合、メインの軸の長さとして指定された width や height は、すべて無視されます。その他のキーワードは通常と同じで、flex のベースサイズを細かく指定できます。
flex-basis
flex
content
min-content
max-content
fit-content
width
height
auto
これまでは、レスポンシブ レイアウトでコンテナに対して display:flex を追加または削除する場合、個々の項目で値を追加または削除しなければならない場合がありました。content の導入により、それが不要になることもあります。
display:flex
scrollbar-gutter プロパティは、スクロールバーのガター(スクロールバーを表示するために予約されている領域)の有無をコントロールします。これにより、コンテンツが増加した場合にレイアウトが変わることを防ぎつつ、スクロールが不要な場合に余分な領域が表示されないようにすることができます。 スクロールバーの有無自体は、overflow プロパティによって決まる点に注意してください。従来型のスクロールバーを使うかオーバーレイ スクロールバーを使うかを決めるのは、ユーザー エージェントです。デベロッパーは、このプロパティを使うことで、ブラウザが提供するスクロールバーとレイアウトとの相互作用を細かくコントロールできます。
scrollbar-gutter
overflow
この API を使うと、MediaStreamTracks によってローメディアを操作できます。操作できるのは、カメラやマイク、画面キャプチャ、コーデックのデコーダ部分などの出力や、コーデックのデコーダ部分への入力などです。WebCodecs インターフェースを使ってローメディアのフレームを表現し、ストリームを使って公開します。この仕組みは、WebRTC Insertable Streams が RTCPeerConnection からエンコード済みデータを公開する方法と同様です。サンプルのユースケースとして、おかしな帽子、物体のリアルタイム検出や注釈付けがあります。
MediaStreamTracks
Flash が削除されたことで、navigator.plugins と navigator.mimeTypes から何かを返す必要はなくなりました。この API は、主に以下の目的で使われていました。
navigator.plugins
navigator.mimeTypes
この API を使って PDF ビューアのサポートを確認しているサイトもあります。今回の変更により、この配列は PDF ビューア プラグインの標準リストを含む固定のリストを返すようになります。
これによって API が削除または変更されることはありません。2 つの既存 API で固定の配列が返されるようになるだけです。
このバージョンの Chrome には、V8 JavaScript エンジンのバージョン 9.4 が組み込まれます。具体的には、以下の変更点が含まれます。最新の機能リストをすべて確認したい方は、V8 リリースノートをご覧ください。
Chrome がウェブ公開サンプリング プロファイラをサポートし、クライアント JavaScript の実行時間を計測できるようになります。実際のユーザーから JavaScript のプロファイルを収集すると、パフォーマンスの低下が観測された場合のデバッグに役立てることができます。面倒な手動インストルメンテーションをする必要はありません。
このバージョンの Chrome では、以下のサポートの終了機能の削除が行われます。現在サポートが終了している機能と以前に削除された機能のリストは、ChromeStatus.com をご覧ください。
サードパーティ コンテキストでの WebSQL が非推奨となります。この機能の削除は、Chrome 97 で行われる予定です。Web SQL Database 標準が最初に提案されたのは 2009 年 4 月で、2010 年 11 月に検討が中止されました。Gecko はこの機能を実装しておらず、WebKit では 2019 年に非推奨となりました。W3C は、代替手段として Web Storage や Indexed Database を推奨しています。
デベロッパーは、WebSQL 自体が非推奨であり、利用率が十分低くなった際に削除される予定であることを想定する必要があります。
サブリソースのプライベート ネットワーク リクエストは、セキュア コンテキストからのみ開始できます。プライベート ネットワーク リクエストとは、パブリック ネットワークで開始され、プライベート ネットワークを対象とするリクエストです。これには、インターネットから イントラネット へのリクエストや、イントラネット ループバックなどが含まれます。
今回の対応は、プライベート ネットワーク アクセスの完全実装に向けた最初の一歩です。ローカル ネットワーク内やユーザーのデバイス上で実行されているサーバーは、ウェブに充実した機能を公開しますが、これは危険な場合もあります。プライベート ネットワーク アクセスで提唱されている一連の変更は、サーバーに外部エンティティとの通信をオプトインさせることで、このようなサーバーへのリクエストによる影響を制限します。
このオプトインが意味を持つためには、クライアントのオリジンが認証されていることをサーバーが確認できなければなりません。これを実現するため、セキュア コンテキストのみに外部リクエストの実行を許可します。