特に記載のない限り、下記の変更は Android、Chrome OS、Linux、macOS、Windows 向けの最新の Chrome ベータ版チャンネル リリースに適用されます。ここに記載されている機能の詳細については、リンクまたは ChromeStatus.com の一覧でご確認ください。2021 年 6 月 3 日の時点で Chrome 92 はベータ版です。
ウェブアプリでファイルの読み取りと書き込みができるようになったので、次の論理的なステップは、デベロッパーがファイルの作成や処理をするウェブアプリをファイル ハンドラとして宣言できるようにすることです。File Handling API は、まさにそれを行います。たとえば、テキスト エディタ PWA が自身をファイル ハンドラとして登録すると、オペレーティング システムのファイル マネージャーで .txt ファイルを右クリックし、この PWA に(常に、または 1 回だけ).txt ファイルを開くように指示できます。つまり、ファイル マネージャーで(ダブル)クリックするだけで、PWA を利用できます。
これにより、PWA ユースケースのユーザー エクスペリエンスが改善され、これまでよりも OS のアプリに近くなります。次に例を示します。
ファイル ハンドリングのオリジン トライアルは 92 で始まり、2021 年 8 月末ごろまで続く予定です。この機能の詳細については、ウェブ アプリケーションをファイル ハンドラにするをご覧ください。このリリースのその他のオリジン トライアルについては、以下のオリジン トライアルをご覧ください。
このバージョンの Chrome には、以下のオリジン トライアルが導入されています。オリジン トライアルとして新機能を試せるようにすることで、ウェブ標準コミュニティにユーザビリティ、実用性、有効性についてのフィードバックを提供することができます。以下の項目を含め、現在 Chrome でサポートされているオリジン トライアルに登録するには、Chrome オリジン トライアル ダッシュボードをご覧ください。Chrome のオリジン トライアルの詳細については、ウェブ デベロッパーのためのオリジン トライアル ガイドをご覧ください。Microsoft Edge は、Chrome とは別に独自のオリジン トライアルをしています。詳細については、Microsoft Edge オリジン トライアル デベロッパー コンソールをご覧ください。
Shared Element Transitions を使うと、シングルページ アプリケーション(SPA)とマルチページ アプリケーション(MPA)の両方でシンプルな画面遷移を実現できます。デベロッパーはユーザー エージェントが提供する遷移効果の中から選ぶだけでよいので、最低限の作業でページの視覚的な洗練度が向上します。シングルページ アプリでは、この機能がない場合、アニメーションと DOM 操作を慎重に連動させなければ望む効果を実現できないので、画面遷移効果を実現するのは困難です。マルチページ アプリでは、ページが制御できるのは自身のビューだけなので、画面遷移効果を実現できない場合がほとんどです。今回のオリジン トライアルは、SPA のユースケースのみに対応します。
ほとんどの Android ランチャーで、以前は 4 つまでアプリのショートカット機能を登録できましたが、今後は 3 つだけになります。サイト設定へのショートカットが Android ランチャーのアプリアイコンに追加され、アプリのショートカット機能のスロットが 1 つ減ることになります。詳しくは、アプリのショートカット機能でものごとをすばやく行うをご覧ください。
@font-face に size-adjust ディスクリプタが追加され、特定のフォント フェイスで CSS の font-size や em などの派生指標に影響を与えることなく、グリフのサイズのスケーリングができるようになりました。CSS の font-size は、フォントを描画するボックスのスケール ファクタと見なされます。ボックス内のグリフのサイズはフォントによって異なりますが、size-adjust を使うと、さまざまな種類のフォントでサイズを合わせることができます。そのため、このディスクリプタを使ってフォールバック フォントとプライマリ ウェブフォントのマッチアップをすることで、Cumulative Layout Shift(ページのレイアウトのずれ)を減らすことができます。
@font-face
font-size
命令的な slot 割り当てを使うと、マークアップで slot 属性を必要とせず、ノードからスロットへの割り当てをすることができます。これにより、入力条件や種類に応じた動的なスロット割り当て動作が可能になります。この機能は、もともとは Chrome 86 に導入されました。今回のリリースで API が調整され、他のブラウザとの相互運用性が向上しています。
このバージョンの Chrome には、V8 JavaScript エンジンのバージョン 9.2 が組み込まれます。具体的には、以下の変更点が含まれます。最新の機能リストをすべて確認したい方は、V8 リリースノートをご覧ください。
Intl.DateTimeFormat() メソッドに dayPeriod オプション(ECMA402 2021 の一部)が追加され、呼び出し元が時間を「7 in the morning」、「11 in the morning」、「12 noon」、「1 in the afternoon」、「6 in the evening」、「10 at night」などの形式(または中国語で「清晨 7 時」、「上午 11 時」、「中午 12 時」、「下午 1 時」、「下午 6 時」、「晚上 10 時」)を指定できるようになりました。
Intl.DateTimeFormat()
これによって Intl.DateTimeFormat() が拡張され、C++ や Java で ICU や ICU4J を呼び出して実行できる既存の操作と同じことを実現できるようになります。この機能がなければ、デベロッパーはサーバーで四半期をフォーマットするか、時間帯のパターンと時間の対応表をサーバーからクライアントに送信することによって、このタスクをする必要があります。
Array.prototype、String.prototype、TypedArray のプロトタイプに at() という新しいメソッドを追加し、負のインデックスによる相対インデックスを利用できるようにします。次に例を示します。 let arr = [1,2,3,4]; arr.at(-1); // Returns 4
Array.prototype
String.prototype
TypedArray
at()
let arr = [1,2,3,4]; arr.at(-1); // Returns 4
ICU LocaleMatcher に BestFitMatcher 抽象オペレーションが実装され、ロケールデータとの照合が向上します。
デスクトップ プラットフォームの SharedArrayBuffer がクロスオリジン分離環境のみに制限されます。これにより、動作が最新の Android や Firefox と一致します。クロスオリジン分離されたページでは、オプトインされていないクロスオリジン リソースの読み込みとクロスオリジンのウィンドウとの通信がブロックされます。そのため、ページは安全な環境と見なされます。SharedArrayBuffer を使えるのは、クロスオリジン分離をオプトインしたページのみになります。導入されるオプションの詳細については、Android 版の Chrome 88 とデスクトップ版の Chrome 92 における SharedArrayBuffer のアップデートをご覧ください。
SharedArrayBuffer
Media Session API に "togglemicrophone"、"togglecamera"、"hangup" アクションが追加されました。これにより、ビデオ会議サイトのデベロッパーが、ブラウザのインターフェースでこれらのアクションを扱えるようになります。たとえば、ユーザーがビデオ通話をピクチャー イン ピクチャー ウィンドウにした場合、ミュート / ミュート解除、カメラのオン / オフ、通話終了のボタンをブラウザに表示できます。ユーザーがこれらをクリックすると、ウェブサイトは Media Session API を通して処理できます。詳細については、最新記事の該当セクションを参照するか、デモをお試しください。
"togglemicrophone"
"togglecamera"
"hangup"
Chrome は、フェッチしたリソースが Timing Allow Origin チェックを通過するかどうかを計算する際に、Tainted Origin フラグを考慮するようになります。Timing Allow Origin チェックは、ページで使われるリソースに関する詳細タイミング情報を受け取れるかどうかを判断するために Resource Timing で使用されます。オリジンをまたぐ複数のリダイレクトがある場合、Tainted Origin フラグがこのチェックに影響します。その場合、ヘッダーを '*' にする必要があります。つまり、具体的なオリジンであってはいけません。
リソースが(リダイレクトによって)2 つのオリジンにまたがる場合、このチェックを通過するために Timing-Allow-Origin: * を使用する必要があります。たとえば、オリジン A のページがオリジン B のリソースをフェッチし、オリジン B のリソースからオリジン C のリソースにリダイレクトされる場合、Tainted Origin フラグが設定され、最終的なリソースが詳細なタイミング情報を受け取るには、Timing-Allow-Origin: * が必要になります。
Timing-Allow-Origin: *
Web Bluetooth API で、ベンダー ID やプロダクト ID などのメーカーデータによるフィルタが可能になります。これまでも、近くにある Bluetooth デバイスで、アドバタイズされる名前やサービスに一致するものをブラウザのピッカーで選択することはできました。しかし、近くにある Bluetooth デバイスを、アドバタイズされるメーカー固有のデータで絞り込むことはできませんでした。メーカーのデータは、options.filters の新しいプロパティで指定し、Bluetooth.requestDevice() に渡します。詳細については、JavaScript で Bluetooth デバイスと通信するを参照するか、デモをお試しください。
Bluetooth.requestDevice()
このバージョンの Chrome では、以下のサポートの終了と機能の削除が行われます。現在サポートが終了している機能と以前に削除された機能のリストは、ChromeStatus.com をご覧ください。
この機能は、ウェブベースの支払いハンドラが URL のない paymentrequest イベントを受け取れるようにするものですが、 "basic-card" や "tokenized-card" などの Standardized Payment Method Identifier が削除されました。
paymentrequest
"basic-card"
"tokenized-card"