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Chrome 86: フォーカス ハイライトの改善、WebHID など
2020年9月17日木曜日
この記事は Chromium Blog の記事 "
Chrome 86: Improved Focus Highlighting, WebHID, and More
" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。
特に記載のない限り、下記の変更は Android、Chrome OS、Linux、macOS、Windows 向けの最新の Chrome ベータ版チャンネル リリースに適用されます。ここに記載されている機能の詳細については、リンクまたは
ChromeStatus.com
の一覧でご確認ください。2020 年 9 月 3 日の時点で Chrome 86 はベータ版です。
CSS 疑似クラス: focus-visible とクイック フォーカス ハイライト
キーボードやそれに似た補助技術を使ってウェブを移動するユーザーにとって、フォーカス インジケーターが持つ視覚的な意味は不可欠です。フォーカスに関するユーザーとデベロッパーの両方のエクスペリエンスを改善するため、Chrome 86 に 2 つの機能を導入します。
最初の機能は CSS セレクタ
:focus-visible
です。デベロッパーがこれを指定すると、デフォルトのフォーカス インジケーターを表示するかどうかを決める際にブラウザが使う経験則を利用できます。
2 つ目の機能は、クイック フォーカス ハイライトというユーザー設定です。この設定を有効にすると、アクティブな要素に追加のフォーカス インジケーターが表示されます。重要な点は、ページの CSS でフォーカス スタイルが無効になっていても、このインジケーターが表示されることです。また、
:focus
スタイルや
:focus-visible
スタイルがあれば、常に表示されるようになります。詳細については、
ユーザーとデベロッパーがフォーカスを細かく制御できるようにする
をご覧ください。
WebHID API
注:
当初、この機能のオリジン トライアルは Chrome 85 から始まると発表されていましたが、このスケジュールは変更されました。
ヒューマン インターフェース デバイス(HID)には、新しすぎる、古すぎる、あまりにも一般的でないなどの理由で、システムのデバイス ドライバーからアクセスできないロングテールなものがあります。WebHID API は、デバイス固有のロジックを JavaScript で実装する方法を提供することで、この問題を解決します。
HID は、人間からの入力を受け取ったり、人間に対して出力を提供したりします。デバイスには、キーボード、ポインティング デバイス(マウス、タッチスクリーンなど)、ゲームパッドなどがあります。
ゲームパッドのサポートにおいては、一般的でない HID デバイスにアクセスできないのは特に苦痛です。ゲームパッドの入出力はうまく標準化されておらず、多くの場合、ウェブブラウザに特定のデバイス向けのカスタム ロジックが必要となります。これはサステナブルはなく、古いデバイスや一般的でないデバイスといったロングテールがサポートされないことになります。
現在、この新しい API の使い方を説明する記事を執筆中です。それまでの間は、一部の熱心なエンジニアによるデモを参考に、新しい API を試してみてください。このデモを見るには、
ウェブのヒューマン インターフェース デバイス: いくつかの簡単な例
をご覧ください。
オリジン トライアルのセクション
には、登録に関する情報や、本リリースで開始された他のオリジン トライアルのリストが掲載されています。このオリジン トライアルは、2021 年 1 月の Chrome 87 まで行われる予定です。
オリジン トライアル
このバージョンの Chrome には、以下のオリジン トライアルが導入されています。オリジン トライアルとして新機能を試せるようにすることで、ウェブ標準コミュニティにユーザビリティ、実用性、有効性についてのフィードバックを提供することができます。以下の項目を含め、現在 Chrome でサポートされているオリジン トライアルに登録するには、
オリジン トライアル ダッシュボード
をご覧ください。オリジン トライアル自体の詳細については、
ウェブ デベロッパーのためのオリジン トライアル ガイド
をご覧ください。
新しいオリジン トライアル
クロススクリーン ウィンドウ配置
新しい
画面情報 API
を追加し、既存のウィンドウ配置 API を徐々に改善します。これにより、ウェブ アプリケーションが魅力的なマルチスクリーン エクスペリエンスを提供できるようになります。
既存の
window.screen プロパティ
は、利用可能な画面スペースの一部しか参照できません。一方、ウィンドウ配置機能は現在の画面に限られるのが一般的です。本機能を使うと、ウェブ アプリケーションで最新のマルチスクリーン機能を利用できるようになります。
battery-savings メタタグ
メタタグを追加し
、電池寿命を節約して CPU 使用量を最適化するためにユーザー エージェントが利用する推奨方法をサイトから指定できるようにします。CPU や電池を多用することがわかっているウェブサイトでは、ユーザーからのリクエストがなくても、UA が CPU や電池に対する最適化を行うようにリクエストしたいと思うこともあるでしょう。電池節約機能は、ほとんどの最新オペレーティング システムにも搭載されており、電池が残り少ない場合やユーザーが電池を節約したい場合にオンになります。ウェブサイトにもその設定が反映されるのが理想的です。前述のような状況で、サイトが最も適切な戦略をユーザー エージェントにアドバイスしたい場合もあるでしょう。
安全な支払いの確認
安全な支払いの確認
は、
Web Authentication API
を利用して、ウェブで支払いを行う際の認証操作を拡張します。この機能によって、
Credential Management API
に新しい
PaymentCredential
認証情報タイプが追加され、銀行などのリライング パーティが
PublicKeyCredential
を作成できるようになります。任意の販売元は、
Payment Request API
によるオンライン決済の一部として、提案された secure-payment-confirmation 支払い方法を使ってこの認証情報を照会できます。
この機能により、プラットフォームの認証機能によるスムーズで一貫性のある強力な認証操作を実現できます。EU をはじめとする多くの地域では、強力な認証がオンライン支払いの要件になりつつあります。この新機能により、ユーザー エクスペリエンスが向上し、既存のソリューションよりもセキュリティが強化されます。
Cross-Origin-Opener-Policy Reporting API
デベロッパーがウェブサイトに Cross Origin Opener Policy(COOP)を導入する
際に役立つレポーティング API が追加されます。COOP が強制されている場合の違反の報告に加え、COOP が強制されていたら発生していた潜在的な違反を報告する報告のみのモードも存在します。このオリジン トライアルに登録するには、上のリンクにアクセスしてください。詳しくは、
COOP と COEP を使ってウェブサイトを「クロスオリジン分離」する
をご覧ください。
完了したオリジン トライアル
Chrome で以前にオリジン トライアルが行われていた以下の機能は、現在デフォルトで有効化されています。
Native File System
新しい Native File System API を使うと、ユーザーのローカル端末にあるファイルを操作できます。これにより、IDE、写真や動画のエディタ、テキスト エディタなどの強力なウェブアプリを構築できるようになります。ユーザーがアクセス権を与えると、ウェブアプリはこの API を使ってユーザーの端末にあるファイルやフォルダを直接読み取ったり保存したりできるようになります。この処理は、すべてプラットフォーム独自のファイルを開くまたはファイルを保存するダイアログ ボックスを通して行われます。下のイメージは、Mac でファイルを開くダイアログ ボックスを使っているウェブページを示しています。
詳細を知りたい方、サンプルコードやテキスト エディタのデモアプリを見たい方は、
Native File System API: 簡単にローカル ファイルにアクセスする
をご覧ください。
注:
この API のインターフェースは、オリジン トライアルで利用できたものから大幅に変更されています。差分は、仕様リポジトリで
詳しく説明
しています。 本番バージョンの API の詳しい使い方は、今後数週間のうちに上に示した web.dev の記事で説明する予定です。
今回のリリースに追加されたその他の機能
PointerEvents v3 の Altitude と Azimuth
PointerEvents
に
Altitude
と
Azimuth
角度が追加されました
。端末で利用できるペアに応じて、
altitude
および
azimuth
変換に
tiltX
と
tiltY
が、
tiltX
および
tiltY
変換に altitude と azimuth が追加されます。これらは、端末が一般的に測定する角度です。altitude と azimuth は、三角法を使って
tiltX
、
tiltY
から計算できます。ハードウェアから見ると、
tiltX
と
tiltY
を測定する方が簡単でコストもかかりません。
タッチペン アプリから見ると
altitude
と
azimuth
の方が合理的で、ユーザーにも直感的です。
tiltX
と
tiltY
を使うには、デベロッパーが 2 つの仮想平面の交差角を視覚化する必要がありますが、ペンと画面の表面だけを見ればよいので、
azimuth
と
altitude
の方が視覚化しやすくなっています。
azimuth
と
altitude
の追加により、API の直感性が向上します。
tiltX
と
tiltY
、
altitude
と
azimuth
の間の変換と逆変換を提供することで、
tiltX
と
tiltY
を使うアプリとの下位互換性が実現できます(新しい端末が
altitude
と
azimuth
のみを返す場合も同様です)。
パスワード変更用の well-known URL
ウェブサイトは、
パスワード変更用の well-known URL
(たとえば
/.well-known/change-password
)を設定できます。この URL の目的は、ユーザーがすばやくパスワードを変更できるように、パスワード変更用のページにリダイレクトすることです。Chrome が保存されたパスワードが侵害されたことを検知すると、この URL を使ってユーザーのパスワード変更をサポートします。詳細については、
パスワード変更用の well-known URL を追加してユーザーが簡単にパスワードを変更できるようにする
をご覧ください。
カスタム プロトコル ハンドラが URL を計算した場合の空白文字のエンコードの変更
navigator.registerProtocolHandler()
ハンドラは、
空白を "%20" に置換
するようになります。これまでは、"+" に置換されていました。これにより、Chrome と Firefox などの他のブラウザの処理が統一されます。
CSS ::marker 疑似要素
<ul>
要素と
<ol>
要素の
数字と箇条書き記号をカスタマイズするための疑似要素
が追加されます。この変更により、色、サイズ、箇条書き記号の形状、数字の種類をデベロッパーが制御できるようになります。
Document-Policy ヘッダー
Document Policy
は、iframe のサンドボックス化と同じようにドキュメント単位でウェブ プラットフォームとの接点を制限します。ただし、Document Policy の方がはるかに柔軟で、以下のようなことを実現できます。
パフォーマンスの悪いイメージの利用を制限する
遅い同期 JavaScript API を無効化する
iframe、イメージ、スクリプトの読み込みスタイルを設定する
ドキュメント全体のサイズやネットワークの利用を制限する
ページの再レイアウトが発生するパターンを制限する
さらに、このヘッダーを使うと、テキスト フラグメントへのスクロール機能のプライバシー緩和策として、読み込み時のフラグメントやテキスト フラグメントへのスクロールをサイト側でオプトアウトできます。これは、Document Policy API の中で初めて搭載される機能です。
EME persistent-usage-record セッション
"persistent-usage-record session"
という名前の
新しい
MediaKeySessionType
が追加されます。この種類のセッションでは、ライセンスとキーは永続化されず、セッションで利用するキーが破棄されたときにキーの利用記録が永続化されます。この機能は、詐欺検知のような目的で復号キーがどのように使われているかをコンテンツ プロバイダが理解する際に役立つ可能性があります。
FetchEvent.handled
Service Worker にディスパッチされた
FetchEvent
は読み込みパイプライン中に存在しますが、これはパフォーマンスの影響を受けやすくなっています。新しい
FetchEvent.handled
プロパティ
は、Service Worker がクライアントにレスポンスを返した際に解決される Promise を返します。これにより、Service Worker は、レスポンスが完了してからしか開始できないタスクの実行を遅らせることができます。
HTMLMediaElement.preservesPitch
audio 要素や video 要素の
再生速度を調整したときにピッチを維持する
べきかを決めるプロパティが追加されます。この機能は、クリエイティブ用途で希望されています(たとえば、ピッチを変更する「DJ デッキ」スタイルのアプリケーション)。また、1.00 に非常に近い速度で再生する場合、ピッチ維持アルゴリズムによってアーティファクトが生じるのを防ぎます。この機能は、Safari と Firefox で既にサポートされています。
Imperative Shadow DOM Distribution API
ウェブ デベロッパーがスロット要素への
割り当てノードを明示的に設定
できるようになります。これにより、Shadow DOM v1 で発生していた次の 2 つの問題が解消されます。
ウェブ デベロッパーは、シャドウホストのすべての子要素に slot 属性を指定する必要がありました(デフォルト スロットの要素を除く)。
コンポーネントの作成者が条件に応じてスロット設定動作を変更することはできませんでした。
新しい API がどのようにこれらの問題を解消するかについては、
Imperative Shadow DOM Distribution API の説明
をお読みください。
window.location.fragmentDirective の移動
window.location.fragmentDirective
プロパティは
document.fragmentDirective
に
移動しました
。これは、
テキスト フラグメント機能
の変更です。
<fieldset> 要素の新しい display 値
<fieldset>
要素
が CSS
'display'
プロパティの
'inline-grid'
、
'grid'
、
'inline-flex'
、
'flex'
の各キーワードをサポートします。
ParentNode.replaceChildren() メソッド
ParentNode の
すべての子要素を渡されたノードで置換するメソッド
が追加されます。これまでは、次の 2 つの方法でノードの子要素を新しいノードセットに置換することができました。
node.innerHTML
と
node.append()
を使ってすべての子要素を消去して置換する
ループで
node.removeChild()
と
node.append()
を使う
registerProtocolHandler() の分散ウェブスキームのセーフリスト
Chrome において、
registerProtocolHandler()
で上書きできる URL スキームのリストが拡張され、
cabal
、
dat
、
did
、
dweb
、
ethereum
、
hyper
、
ipfs
、
ipns
、
ssb
が含まれるようになっています。リストを拡張して分散型ウェブ プロトコルを含めることで、アクセスを提供するウェブサイトやゲートウェイから独立した一般エンティティへのリンクを解決できるようになります。詳しくは、
Are we distributed yet?
の
プログラム可能なカスタム プロトコル ハンドラ
をご覧ください。
Asynchronous Clipboard API の text/html サポート
現在、
Asynchronous Clipboard API
は text/html 形式をサポートしていません。Chrome 86 は、クリップボードを利用した
HTML のコピーと貼り付け
をサポートします。HTML は、クリップボードとの間で読み書きを行う際にサニタイズされます。この変更は、以下のようなユースケースを実現することを目的としています。
ウェブエディタで、イメージやリンクを含むリッチテキストのコピーや貼り付けを行う
リモート デスクトップ アプリケーションが端末間で text/html ペイロードを同期する
document.execCommand()
に代わってコピーおよび貼り付けの機能を提供することも意図しています。
macOS Big Sur の VP9
ベースとなるハードウェアがサポートしている場合、macOS Big Surで VP9 動画コーデックを利用できます。デベロッパーが
Media Capabilities API を使って
再生のスムーズさや電力効率を検出すると、デベロッパーが何もしなくても、プレーヤーのロジックが高解像度帯で自動的に VP9 を優先するはずです。デベロッパーがこの機能をフル活用するには、複数解像度で VP9 ファイルをエンコードし、ユーザーや接続の帯域幅の変動に対応する必要があります。
WebRTC 挿入可能ストリーム
WebRTC の MediaStreamTrack をエンコードおよびデコードする際に、
ユーザー定義処理手順を挿入
できるようになります。これにより、アプリケーションはカスタムデータ処理を挿入できます。これによってサポートされる重要なユースケースとして、中間サーバーを経由して RTCPeerConnection 間で転送されるエンコード データのエンドツーエンドの暗号化があげられます。
サポートの終了と機能の削除
このバージョンの Chrome では、以下のサポートの終了および機能の削除が行われます。
現在サポートが終了している機能
および
以前に削除された機能
のリストは、ChromeStatus.com をご覧ください。
WebView からの WebComponents v0 の削除
Web Components v0 は、PC 版と Android 版の Chrome 80 で削除されました。Chromium 86 では WebView からも削除されます。これにより、
Custom Elements v0
、
Shadow DOM v0
、
HTML Imports
も削除されます。
FTP のサポート終了
Chrome では、FTP URL のサポートを終了して削除する作業が進んでいます。Google Chrome の現在の FTP 実装は、暗号化接続(FTPS)やプロキシをサポートしていません。ブラウザからの FTP の利用率はかなり低く、既存の FTP クライアント機能の改善に注力するのは現実的ではありません。また、影響するすべてのプラットフォームで、機能の豊富な FTP クライアントが利用できます。
Chrome 72 以降では、FTP によるドキュメント サブリソースのフェッチと、トップレベル FTP リソースのレンダリングのサポートが削除されています。現在、FTP URL を開くと、リソースの種類によって、ディレクトリ一覧またはダウンロードが表示されます。Google Chrome 74 以降のバグにより、HTTP プロキシを経由した FTP URL へのアクセスがサポートされなくなっています。FTP のプロキシ サポートは、Google Chrome 76 で完全に削除されました。
Google Chrome の FTP 実装に残された機能は、暗号化されていない接続でのディレクトリ一覧の表示とリソースのダウンロードのみとなっています。
サポート終了のスケジュールは次のとおりです。
Chrome 86
デフォルトで、FTP はほとんどのユーザーに対して有効なままですが、プレリリース チャンネル(Canary 版およびベータ版)で無効になり、安定版のユーザーの 1% で試験的に無効化されます。このバージョンでは、コマンドラインで
--enable-ftp
フラグまたは
--enable-features=FtpProtocol
フラグを使って再有効化できます。
Chrome 87
デフォルトで、FTP サポートは 50% のユーザーに対して無効化されますが、上記のフラグを使うと有効化できます。
Chrome 88
FTP サポートが無効化されます。
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