Local blog for Japanese speaking developers
Android の最新情報: Q ベータ版 3 など
2019年6月7日金曜日
この記事は Dave Burke (VP, Engineering) による XAndroid Developers Blog の記事 "
What’s New in Android: Q Beta 3 & More
" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。
今日は、Android に関する記念すべきニュースを 2 つお知らせいたします。1 つは Android がまもなくバージョン 10 を迎えること。もう 1 つは、世界中で利用されている Android デバイスの台数が 25 億台を超えたことです。
Android Q で最も重視しているのは、イノベーション、セキュリティとプライバシー、Digital Wellbeing の 3 分野です。Google では、5G、折りたたみ式デバイス、狭額縁ディスプレイ、デバイス搭載の AI といった最先端のテクノロジーに対応しつつ、ユーザーのセキュリティ、プライバシー、デジタル ウェルビーイングの確保を常に最優先しています。
先日の Google I/O では Android Q の最新情報をご紹介し、最新のアップデート、Android Q ベータ版 3 を公開しました。皆様のフィードバックは、現時点のアップデートだけでなく、今秋公開予定の最終リリースにも反映いたします。今後も貴重なご意見をお待ちしております。
今年は、12 社の OEM パートナーが発売する 15 のモデルで Android Q ベータ版 3 をご利用いただけます。対応モデルは昨年の 2 倍に増えています。これは、プロジェクト Treble の効果に加え、世界中の Android ユーザーの迅速なアップデートにご協力いただいている Google のパートナー企業(Xiaomi、Nokia、Sony、Vivo、OPPO、OnePlus、ASUS、LGE、TECNO、Essential、realme)のおかげです。
ベータ版対応デバイスの一覧は
android.com/beta
に掲載されています。ご自身のデバイスで最新のアップデートを入手する方法もご覧いただけます。Pixel デバイスの場合は、
こちらで登録する
とベータ版 3 を入手できます。すでにご登録いただいている場合は、まもなく配信されるアップデートをお待ちください。Android Q ベータ版を使って開発を始めたい方は、
developer.android.com/preview
をご覧ください。
プライバシーとセキュリティ
Google I/O でご説明したとおり、プライバシーとセキュリティは Google 全体にとって重要なテーマです。Android Q では、ユーザーを保護するための機能をさらに追加しました。
プライバシー
Android Q ではプラットフォームの保護を強化し、プライバシーを念頭に置いた新機能を開発するなど、プライバシーを特に重視しています。アプリやスマートフォンでどのように情報が収集、使用されるかについて、ユーザー自身が管理できること、および透明性があることが、ますます重要になります。
以前のリリースでの取り組み
をベースに、Android Q ではプライバシーの向上とユーザーによるプライバシー管理を実現するため、システム UI の改良や、アプリが使用できるデータに関する権限管理の厳格化など、プラットフォーム全体で
大幅な変更
が行われています。
たとえば、Android Q では、アプリによる位置情報へのアクセスに関してユーザーが細かく指定できるようになりました。アプリがユーザーに許可を求めるのは今までと同じですが、Android Q ではユーザーが位置情報へのアクセスを許可する際の選択肢が増えて、「アプリの使用中のみ許可」、「常に許可」、「許可しない」から選べるようになっています。位置情報の新しい管理機能をアプリ側で対応させる方法について詳しくは、
デベロッパー ガイド
をご覧ください。
位置情報に関する変更以外にも、ユーザーが選択的に管理できる機能として
対象範囲別ストレージ
を導入しました。アプリによるファイルへのアクセスを管理して、ユーザーの機密情報や他のアプリのデータにアクセスできないようにすることが可能です。この機能は皆様のフィードバックを基に改良を重ね、最近
発表したいくつかの変更
によりさらに対応しやすいものになっています。これらはベータ版 3 でご利用いただけます。
もう 1 つの重要な変更は、
アプリがバックグラウンドから起動する挙動の制限
です。これにより、アプリが突然フォアグラウンドとして表示され、そのアプリにフォーカスが移るのを防ぐことができます。今までは警告をトースト表示していましたが、ベータ版 3 ではこうした起動を実際にブロックするように変更しました。
トラッキングを防ぐための措置として開始されるのは、デバイスの IMEI やシリアル番号などの
リセットできないデバイス ID へのアクセスの制限
です。アプリの用途に適した ID を選ぶための
ベスト プラクティス
をご覧ください。また、異なる Wi-Fi ネットワークにデバイスが接続する際の
MAC アドレスのランダム化
、および位置情報の利用許可に関する
接続関連 API の制限
も導入されます。
アプリが対応
するための十分な時間がとれるよう、これらの変更は早期に公開されています。
セキュリティ
ユーザーのセキュリティを確保するため、
BiometricPrompt
認証フレームワークを拡張して、システムレベルで生体認証がサポートされました。顔認証などのパッシブ認証に対するサポートを強化し、明示的な認証フローと暗黙的な認証フローを追加しています。明示的フローでは、ユーザーがトランザクションを明示的に確認する必要があります。新しい暗黙的フローは、パッシブ認証を使用するトランザクション用の軽量な代替手段として設計されたもので、ユーザーによる明示的な確認が不要です。
さらに Android Q では、パフォーマンスの向上とセキュリティの強化を実現する
TLS 1.3
(TLS 標準のメジャー バージョンアップ)をサポートするようになりました。Google のベンチマークでは、TLS 1.3 によるセキュアな接続の確立は、TLS 1.2 に比べて約 40% 速くなることが示されています。TLS 1.3 は、Android の TLS スタックである Conscrypt を通じて行われるすべての TLS 接続に対して、対象 API レベルにかかわらず、デフォルトで有効になっています。詳しくは、こちらの
ドキュメント
をご覧ください。
プロジェクト Mainline
今日は「プロジェクト Mainline」についてもご紹介します。これは、Android ユーザーのセキュリティを確保しデバイスを最新の状態に保つために、重要なコード変更を Google Play から直接行えるようにする新たなアプローチです。プロジェクト Mainline では、OS 内部の特定コンポーネントを Google 側からアップデートできるようになるため、デバイス メーカーがシステム全体をアップデートする必要がなくなります。つまり、デバイスの OS コードを常に最新の状態に保つことができ、これまでにない整合性を実現し、最新の AOSP コードをより早く、長期間にわたって配信できるようになります。
プロジェクト Mainline モジュールのアップデートは、現在のアプリ アップデートの配信とほぼ同じ方法で提供される予定です。最新アップデートはバックグラウンドで Google Play からダウンロードされ、その後スマートフォンが起動したときに読み込まれます。モジュールのソースコードは引き続き
Android オープンソース プロジェクト
で公開され、リリースされたアップデートもすべてオープンソースとして公開されます。また、オープンソースという性質上、世界中に存在する多数のパートナーやデベロッパー コミュニティによって提供される機能の改善やバグの修正も含まれます。
ユーザーにとってのメリットは相当大きなものになります。最新モジュールの配信により、デバイスのセキュリティ、プライバシー、整合性を常に最新状態に維持できるからです。システム全体のアップデートが不要になり、OS の主要部分を最適化して保護できるため、デバイス メーカー、携帯通信会社、企業にとっても大きなメリットが得られます。
アプリやゲームのデベロッパーの皆様にとっては、プロジェクト Mainline を利用することで、プラットフォーム上における主要領域で実装時の整合性が向上すると考えられます。時間とともに統一性が高まることで、開発やテストにかかる費用を削減でき、想定どおりに動作するアプリを作れるようになるでしょう。プロジェクト Mainline は、Android Q 以降を搭載するすべてのデバイスで利用可能となる予定です。プロジェクト Mainline に対応したデバイスを提供できるよう、Google は引き続きパートナー各社と緊密に連携していきます。
イノベーションと新機能
Android は、最先端のイノベーションを体現したプラットフォームです。Google は Android エコシステムのパートナーとともに、進化するハードウェアとソフトウェアを組み合わせた新しいユーザー エクスペリエンスを提供しています。
折りたたみ式デバイス
今年はディスプレイ技術の大躍進の年になりそうです。複数の大手デバイス メーカーが、折りたたみ式の Android デバイスの発売を予定しているためです。このデバイスは、折りたたんでいるときはスマートフォンのように使用でき、広げるとタブレット サイズの洗練されたディスプレイになります。
Android Q では、折りたたみデバイスの開閉時に画面がシームレスに移行するよう最適化されているため、アプリやゲームは画面を開閉してもそのまま続けられます。マルチタスクについては、
onResume
と
onPause
に変更が加えられています。複数のアプリの再開に対応できるようになり、アプリがフォーカスを受け取ると通知されるようになりました。また、マニフェスト属性
resizeableActivity
の機能を変更し、大きい画面でアプリをどのように表示するかを管理できるようにしました。
すでに数社のパートナー企業が革新的な折りたたみ式デバイスを発表していますが、他社の追随も予想されます。対応アプリをすぐに開発、テストできるよう、
Android Studio 3.5 のカナリア リリース
で折りたたみ式デバイスのエミュレータをご用意しています。
5G ネットワーク
5G ネットワークは、超高速、低遅延の安定した通信を実現する次世代のワイヤレス テクノロジーです。アプリ開発においては、5G の導入により、新たな機能の追加や既存機能の強化といったことが可能になります。
Android Q では 5G がプラットフォーム レベルでサポートされ、アプリを 5G 対応に変更できるよう既存の API も拡張されています。接続関連の API を使用して、デバイスで高帯域幅接続が利用可能かどうか、またその接続が従量制かどうかを確認できるようになりました。アプリやゲームにこれらの機能を実装することで、5G 環境を活かした臨場感あふれる魅力的な体験をユーザーに提供できます。
オープンな仕組みを備え、多様なパートナーにご参加いただいている Android エコシステムでは、急速に 5G 対応の範囲が広がると予想されます。今年は 10 社を超えるメーカーが 5G 対応の Android デバイスを発売し、20 社以上の携帯通信会社が世界各地で 5G ネットワークの提供を開始する予定です(すでに幅広くサービスを展開しているところもあります)。
自動字幕起こし
イノベーションはハードウェアにとどまりません。Android の AI が OS 自体を変革していますが、より幅広いユーザーにとって、さらにスマートで使いやすい Android を実現するための取り組みを進めています。その好例が、自動字幕起こしです。これは Android Q の新機能のひとつで、スマートフォンで再生中のメディアに自動で字幕を付けます。
字幕を表示して動画を見る人は少なくありません。外出先や混雑した場所でも、字幕があれば内容を追えるためです。しかし、
世界中の 4 億 6,600 万人の聴覚障がい者
にとっては、字幕は単なる利便性を超えた、コンテンツの理解に不可欠な機能です。自動字幕起こしの開発にあたっては、聴覚障がい者のコミュニティにご協力いただきました。
自動字幕起こしは、スマートフォンのアプリで再生されるメディア(動画、ポッドキャスト、音声メッセージ、自分で録音した音声など)にリアルタイムで字幕を付けます。そのうえ、ネットワークに接続していなくても使用できます。今年前半に飛躍的に進歩した音声認識のおかげで、必要なすべての処理をデバイス上で行うことができるようになったのです。自動字幕起こし用の音声モデルがスマートフォン上で実行され、音声ストリームはすべてデバイス内で処理されます。
自動字幕起こしをアプリやゲームに導入すれば、1 回タップするだけでデジタル メディアがさらに利用しやくなるため、ユーザー層を拡大するチャンスが生まれます。自動字幕起こしは、今年後半に提供を開始する予定です。
通知でのアクションの提案
Android Pie で導入されたスマート リプライでは、ユーザーが通知から直接アプリに返信できます。返信やアクションを添付するための API は揃っているものの、そうした返信などはアプリ側で用意する必要がありました。
Android Q では、すべてのアプリですぐに(何の作業も必要なく)スマート リプライをご利用いただけるようになります。ベータ版 3 からは、システムが提供する返信やアクションが、デフォルトで直接通知に挿入されます。
ML Kit
などの機械学習フレームワークを使用している場合など、必要であれば引き続き独自の返信やアクションを作成することも可能です。システムが提供する返信またはアクションは、
setAllowGeneratedReplies()
と
setAllowSystemGeneratedContextualActions()
を使用して通知ごとに無効にできます。
Android Q では、プラットフォームに組み込まれているデバイス上の ML サービスに基づいて返信が提案されます。これは、Google のテキスト分類用エンティティ認識に使用しているものと同じサービスです。ユーザーのプライバシーを念頭において開発されており、ML 処理はバックエンド サーバーではなく完全にデバイス上で実行されます。
提案されるアクションは
TextClassifier
サービスをベースにしているため、Android Q で追加された言語検出などの新機能を活用できます。また、TextClassifier API を直接使用して、システムが提供する通知やアクションを生成したり、必要に応じて独自の返信やアクションと組み合わせたりすることも可能です。
ダークテーマ
周囲が薄暗いときにアプリにダークテーマを適用すると、目の疲れを軽減でき、電池の節約にもなるため、多くのユーザーに評価されています。また、デバイスのどの画面でもダークテーマを有効にできる簡単な方法をリクエストする声も多数いただいていました。このように以前からご要望が多かったダークテーマが、Android Q で本格的に導入されます。
Android Q ベータ版 3 以降では、システム全体でダークテーマを有効にできます。方法は、[設定] > [ディスプレイ] に移動する、新しいクイック設定タイルを使用する、バッテリー セーバーをオンにする、のいずれかです。これによりシステム UI が暗くなり、アプリのダークテーマが有効になります(アプリが対応している場合)。アプリには独自のダークテーマを用意できます。新登場のフォースダーク機能を有効にして既存のテーマにダークテーマを自動適用することも可能です。アプリの現在のテーマで android:forceDarkAllowed="true" に設定するだけで、フォースダーク機能が有効になります。
アプリに適用するダークテーマを自由に設定したいという方のために、今回、AppCompat の DayNight 機能の改良にも力を注ぎました。DayNight を使用することで、デバイスに搭載されている Android のバージョンにかかわらず、アプリのすべてのユーザーにダークテーマを提供できます。詳しくは、
こちら
をご覧ください。
ジェスチャー ナビゲーション
最新型 Android デバイスの多くが美しい狭額縁ディスプレイを採用しており、ユーザーはこうしたディスプレイを最大限に活用したいと考えています。Android Q では、完全なジェスチャー モードが新たに導入されます。ナビゲーション バー領域がなくなり、アプリやゲームのコンテンツが全画面で表示できるようになります。従来の「戻る」や「ホーム」、操作履歴などの機能は、ボタンの代わりにスワイプで使用できるようになっています。
ジェスチャーは、[設定] > [システム] > [操作] で切り替えることができます。現時点でのジェスチャーは 2 種類あります。画面の下から上にスワイプするとホーム画面に戻り、長押しで [最近] が表示されます。画面の左端または右端からスワイプすると、戻るアクションがトリガーされます。
違和感のないジェスチャー ナビゲーションを実現するには、ナビゲーション バーの背後も含む全画面でアプリを表示して、没入感が得られるようにすることが大切です。アプリを全画面表示するために
setSystemUiVisibility()
API を使用し、UI の重要な部分が隠れないように
WindowInsets
を適切に処理することで、ジェスチャー ナビゲーションに対応できます。詳しくは、
こちら
をご覧ください。
Digital Wellbeing
デジタル ウェルビーイングは、Google が Android で取り組んでいる重要なテーマのひとつです。昨年リリースされた Digital Wellbeing には、ダッシュボード、アプリタイマー、Shush、おやすみモードなどの機能が揃っています。これらはいずれも有用なツールです。たとえば、アプリタイマーで制限時間を設定したユーザーは 90% 以上の割合で目標を守れています。おやすみモードを利用したユーザーは夜間のスマートフォンの利用が 27% 減少したことがわかっています。
今年はさらにフォーカス モードとファミリー リンクを追加して、ユーザーにデジタル デバイスをバランスよくご利用いただくための機能を強化していきます。
フォーカス モード
フォーカス モードは、仕事中や勉強中など、何かに集中する必要があるあらゆる場面を想定して設計されています。フォーカス モードでは、作業の邪魔になりそうなアプリを選んで通知をオフにすることができます。たとえば、メールとニュースは一時的に停止させ、地図とテキスト メッセージ アプリはオンのままにするといったことが可能です。集中したいときはいつでも、クイック設定のタイルからフォーカス モードをオンにできます。ここで選んだアプリは、フォーカス モードをオフにするまで一時停止されます。フォーカス モードは今秋、Android 9 Pie デバイスと Android Q デバイスに搭載される予定です。
ファミリー リンク
ファミリー リンクは、保護者向けの管理機能が揃った新しいアプリです。Android Q からデバイスの設定に組み込まれます。保護者がお子様用に新しいデバイスをセットアップする際にファミリー リンクを使用して、自分のデバイスとお子様のデバイスを接続することができます。ファミリー リンクでは、デバイスの 1 日あたりの利用時間の上限を設定したり、お子様が利用しているアプリを確認したり、インストールしたがっている新しいアプリを検討したりできます。また、デバイスのおやすみ時間を設定して、就寝時刻になったらデバイスの接続をオフにすることも可能です。Android Q ではさらに、特定のアプリに制限時間を設定できるようになりました。今日は寝る前に 5 分だけ延長してあげよう、といったときのために「ボーナスタイム」という機能もあります。ファミリー リンクは今秋、Android P デバイスと Android Q デバイスで提供開始予定となっています。今年の
Google Play アワード
には Wellbeing 関連の優れたアプリがノミネートされていますので、ぜひチェックしてください。
保護者はファミリー リンクでお子様のデバイスのおやすみ時間を設定したり、「ボーナス」として利用時間を延長したりできます。
Android の基盤強化
デベロッパーの皆様が新たなユーザー エクスペリエンスを構築できるよう、さらに多くの機能を追加して Android の基盤強化を図っています。以下に、その一部をご紹介します。
ピアツーピア接続とインターネット接続の向上
Android Q では、Wi-Fi スタックをリファクタリングして、プライバシーとパフォーマンスを向上させるとともに、IoT デバイスの管理やインターネット接続候補の提示といった一般的な用途での位置情報の利用許可を不要にして使い勝手を向上させました。
ネットワーク接続 API
を使用した場合に、ピアツーピアの機能(設定、ダウンロード、印刷など)に関して、ローカル Wi-Fi で IoT デバイスを管理しやすくなります。
ネットワーク候補 API
を使用すると、インターネット接続のための Wi-Fi ネットワークの候補をアプリ上でユーザーに提示できます。
Wi-Fi パフォーマンス モード
Android Q では高性能モードと低遅延モードが有効になり、アプリが Wi-Fi 接続の自動調整をリクエストできるようになりました。このモードは、リアルタイム ゲームやアクティブな音声通話など、低遅延が重要な場面では特に大きなメリットをもたらします。プラットフォームはデバイスのファームウェアと連携し、最小限の電力消費で要件を満たすようにします。新しい各モードを使用するには、
WifiManager.WifiLock.createWifiLock()
を呼び出します。
Wi-Fi RTT による正確な屋内位置測定に完全対応
Android 9 Pie で導入された屋内位置測定向けの
RTT API
では、Wi-Fi パケットのラウンドトリップ時間に基づいて、IEEE 802.11mc プロトコルをサポートする付近のアクセス ポイント(AP)との距離を正確に測定することができます。802.11mc 標準の実装が完了した Android Q では、AP で有効にされている場合に、範囲内にある各 AP から位置情報を取得できる
API が追加
されました。
音声再生キャプチャ
自動字幕起こしでは、アプリから音声を取り込んですぐに字幕として画面上に表示できます。この処理はシームレスに実行され、アプリ同士で音声ストリームを共有できることの威力を実感いただけます。Android Q では、アプリの音声ストリームを他のアプリからキャプチャできる
新しい API
を使用できるようになりました。字幕を表示できるほか、ライブストリーミング ゲームのような人気のアプリにも応用でき、再生側のアプリやゲームで遅延が発生することもありません。
この新機能を設計するにあたっては、プライバシーと著作権の保護を優先しました。そのため、別のアプリの音声をキャプチャする機能には制約があります。音声ストリームのキャプチャを許可するかどうかは、アプリの設定で管理できます。詳しくは、
こちら
をご覧ください。
写真用の Dynamic Depth
アプリから Dynamic Depth 形式の画像をリクエストできるようになりました。この形式の画像は、JPEG、深度に関連する要素が格納された XMP メタデータ、深度と信頼度のマップで構成され、Dynamic Depth をサポートしているデバイスではこれらが同じファイルに埋め込まれます。JPEG + Dynamic Depth 形式の画像により、特殊なぼかしなどの加工機能をアプリで提供できるようになります。さらに、このデータから 3D 画像を作成する、AR 写真をサポートする、といったユースケースにも対応できます。Dynamic Depth 形式は Android エコシステム向けに公開されています。
最新の仕様については、こちらをご覧ください。
Google ではパートナーであるデバイス メーカー各社と協力し、Android Q 以降を搭載するデバイスで Dynamic Depth を利用できるように作業を進めています。
Dynamic Depth 形式の画像を使うと、アプリで特殊なぼかしなどの加工ができるようになります
新しいオーディオ コーデックと動画コーデック
Android Q では、オープンソースの動画コーデック
AV1
をサポートするようになりました。AV1 を使用すると、メディア プロバイダは高品質の動画コンテンツを
少ない帯域幅
で Android デバイスにストリーミングできます。また、Android Q は
Opus
を使ったオーディオ エンコードもサポートしています。このコーデックは、会話や音楽のストリーミングのほか、対応デバイスの場合はハイ ダイナミック レンジ動画用の
HDR10+
にも最適です。
MediaCodecInfo API
を使用すると、Android デバイスの動画レンダリング性能を簡単に判断できます。任意のコーデックについて、サポートされているサイズとフレームレートの一覧を取得できます。
Vulkan 1.1 と ANGLE
Google では、Android で
Vulkan
の効果を拡大する取り組みとして、高パフォーマンス 3D グラフィックス向けに低オーバーヘッドのクロスプラットフォーム API を
実装
する作業を続けています。Android Q 以降を搭載するすべての 64 ビットデバイスで Vulkan 1.1 を必須要件に、32 ビットデバイスでは推奨要件にすることを目指し、パートナーのデバイス メーカー各社と連携して取り組んでいます。OpenGL を使用するゲームやグラフィックについては、Vulkan をベースにしたすべてのデバイスを対象として、更新可能な標準 OpenGL ドライバを導入する作業を進めています。Android Q では、Android デバイスの Vulkan 上に構築した
ANGLE
の試験運用版を新たにサポートします。詳しくは、こちらの
ドキュメント
をご覧ください。
Neural Networks API 1.2
Neural Networks API 1.2(NNAPI 1.2)では、ARGMAX、ARGMIN、量子化 LSTM など、60 種類の演算が新たに追加され、さまざまなパフォーマンスの最適化も行われています。これらの変更により、物体検知や画像セグメンテーションなど、さらに多くのモデルを高速化できるようになります。NNAPI 1.2 のサポート体制を整えて展開できるようハードウェア ベンダーと連携し、
TensorFlow
などの人気の機械学習フレームワークを利用しながら作業を進めています。
Thermal API
デバイスが熱くなると、CPU または GPU、あるいはその両方が正常に動作しなくなり、アプリやゲームも予想外の影響を受けることがあります。Android Q では、デバイスの変化を監視し、通常の温度に戻す対策を講じるための
Thermal API
をアプリとゲームで使用できるようになりました。たとえば、ストリーミング アプリの場合は解像度やビットレートを下げる、またはネットワーク トラフィックを低減させる、カメラアプリの場合は負荷の高い画像加工やフラッシュを無効にする、ゲームの場合はフレームレートやポリゴン テッセレーションを制限する、といった対応が可能です。詳しくは、
こちら
をご覧ください。
ART の最適化
Android Q では、ART ランタイムに対するいくつかの改良が加えられています。これにより、デベロッパーが何もしなくても、アプリの起動がより速く、メモリ消費量がより少なくなります。アプリの最初の起動も高速になるよう、Google Play が APK と合わせてクラウドベースのプロファイルを提供するようになります。これらは匿名化された集計
ART プロファイル
であり、起動前でもアプリの一部を ART が事前コンパイルできるようになっています。すべてのアプリにメリットがあるクラウドベースのプロファイルは、すでに Android P 以降のデバイスで利用可能です。
また、ART の並列コピー(CC)ガベージ コレクタに、世代別ガベージ コレクションを追加しています。世代別 CC を使うと、若い世代のオブジェクトが個別に回収されるため、完全ヒープ GC と比較してコストを大幅に削減できます。時間と CPU の点でガベージ コレクションの効率が向上し、ローエンドのデバイスでもアプリの動作が快適になります。
プロジェクト Treble の進展と、Android Q ベータ版対応デバイスの拡大
2017 年に Android Oreo の一部としてスタートした
プロジェクト Treble
の目標は、OS アップデートの迅速化です。Treble は、Android と、デバイス メーカーや半導体メーカーのデバイスコードとの間に、一貫性のあるテスト可能なインターフェースを提供します。これにより、モジュール単位での更新が行いやすくなり、新しい OS バージョンの移植がはるかに簡単になります。
2018 年には、パートナー各社との緊密な連携のもと、Treble 対応デバイス向けに最初の OS アップデートを公開しました。この年は、Pixel および Pixel 2 デバイスに加え、パートナー 7 社から 8 種類のデバイスが Android P ベータ版プログラムに参加しています。その後、Android Pie へのアップデートは順調に進み、アップデートを実施したデバイスの台数は前年同時期の Android Oreo と比べて 2.5 倍となりました。
そして今年、Android Q でさらにその勢いが増しています。
Android Q ベータ版 3
は、Pixel 全機種を含め、世界の主要デバイス メーカー 13 社が発売する 23 種類のデバイスでご利用いただけます。他の Treble 対応デバイスには、テスト環境として Q ベータ版 3 で
Generic System Image(GSI)
もご用意しています。これらで提供される動作、API、機能はすべて同じものです。つまり、さまざまなデバイスでアプリをテストすることが可能であり、早い段階でいろいろな角度から Android Q をお試しいただけるようになっています。
ベータ版に対応しているパートナー各社および Pixel デバイスの一覧は、
android.com/beta
でご覧いただけます。
Android Q ベータ版
をお好きなデバイスでお試しのうえ、ぜひフィードバックをお寄せください。
新しい機能と API
Android Q には、皆様のアプリでご利用いただけるさまざまな
新しい機能や API
が揃っています。ベータ版 3 で変更された内容の概要については
API 差分レポート
を、詳細については Android Q ベータ版
API リファレンス
をご覧ください。
Android Q ベータ版のデベロッパー サイト
では、
リリースノート
や
問題の報告
方法など、その他のリソースを確認できます。
Android Q を使ってアプリを開発するには、Android Q ベータ版の SDK とツールを Android Studio 3.3 以降にダウンロードし、
こちらの手順に沿って
環境を設定します。Android Q 関連の変更に対する最新の修正が必要な場合は、
Android Studio 3.5
以降を使用することをおすすめします。
ベータ版 3 の入手方法
ベータ版 3 を入手するには、
こちらで Pixel デバイスをご登録
ください。アップデートが無線(OTA)で配信されます。すでにご登録いただいている場合は、近日中にアップデートが届きます(特別な対応は必要ありません)。また、
こちら
でシステム イメージをダウンロードすることもできます。
ベータ版 3 は、Android Q ベータ版プログラムに参加しているパートナー メーカーのデバイスからでも入手できます。ベータ版に対応しているパートナー各社および Pixel デバイスの一覧は、
android.com/beta
でご覧いただけます。デバイスごとに仕様を確認できるほか、各メーカーの専用サイトに移動してベータ版のダウンロードやサポートの利用、問題の報告ができるリンクも用意されています。
対応デバイスでさらに広範囲にわたるテストを行う場合は、
Android GSI イメージ
を入手することもできます。Android エミュレータでテストできるデバイスがない場合は、Android Studio SDK Manager で最新のエミュレータ システム イメージをダウンロードしてご利用ください。
皆様からのフィードバックは大変貴重なものです。今後もぜひ
ご意見、ご感想をお聞かせください
。プラットフォームに関する問題(プライバシーの問題、動作の変化を含む)、アプリの互換性に関する問題、サードパーティの SDK に関する問題を報告する際は、Issue Tracker をご利用いただけます。これまでにお寄せいただいたフィードバックは、次回のベータ版リリースに可能な限り反映いたします。
Android Q でもアプリをご提供いただけるよう、よろしくお願い申し上げます。
Posted by
Yuichi Araki - Developer Relations Team
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